
量子コンピュータ技術推進委員会について
量子ICTフォーラム
量子コンピュータ技術推進委員会委員長川畑 史郎
量子コンピュータ技術推進委員会は、量子コンピュータ(誤り耐性汎用量子コンピュータ、中規模量子コンピュータNISQ)及びイジングマシン(量子アニーリングマシン、古典アニーリングマシン)技術の普及と発展に向けて活動を行っています。
量子コンピュータのアイデアは、1982年にリチャード・ファインマンによって提唱されました。それから40年を経た現在、世界中の誰もがインターネットを介して量子コンピュータ実機にアクセスし、量子計算を実行できる時代となりました。また、Google、IBM、Amazon、Intel、Honeywell、Microsoft、Alibaba、Tencent、日立等の国際的大企業やIonQ、Rigetti Computing、XANADU、本源量子、QunaSys、Blueqatなどのベンチャー企業が量子コンピュータハードウェアや量子ソフトウェアの開発を進めています。さらに、アメリカ、日本、イギリス、欧州、中国、台湾、韓国、ロシア、インド等の各国政府は、量子コンピュータを中心とした量子技術に重点的な研究開発投資を行っています。
しかしながら、誤り耐性汎用量子コンピュータが社会実装されるためには、少なくとも20年以上の長い時間が必要であると考えられています。そのため、今後、長期的研究開発投資だけでなく、量子力学と工学の両方に精通した量子人材育成も必須となります。また、短中期的に社会実装が期待できるイジングマシンの研究開発も重要となります。量子コンピュータ技術推進委員会においては、我が国における量子コンピュータ技術の普及、エコシステム・サプライチェーン構築、社会実装に向けて、年4回程度の委員会の開催と以下の活動を行います。
①最新情報共有
年4回程度開催する委員会において、最先端のトピックスについて委員向けにセミナーを開催します。これまで取り上げた具体的なトピックスとしては、企業における量子コンピュータ・イジングマシンの取り組み事例、量子人材育成、量子産学連携、量子国家プロジェクト、量子拠点等です。セミナーを通して、我が国における量子コンピュータ及びイジングマシンの最新研究開発動向について情報共有を行い、会員間の連携を促進します。
②情報発信
量子コンピュータやイジングマシンの各種技術に関する正確な情報発信を行います。我が国においては、これらの技術に関して不正確な情報が氾濫しています。専門家が科学的エビデンスに基づいた偏りのない情報発信を行うことで、量子コンピュータとイジングマシン技術に対する正しい理解と健全な発展を促進します。また、国内で活躍している若手研究者・技術者に対するインタビュー記事を公開し、当該分野への学生や若手の参入を促します。
③イベント開催
産業界とアカデミアが集う産学連携イベントを開催し、周辺技術を含めて、今後戦略的に産学連携をすすめるべき技術領域を明確化すると同時に、会員間のマッチングをすすめます。また、会員向けに、専門家による基礎技術セミナーやハンズオンを開催し、基礎理論や基盤技術の普及を行います。
上記に加えて、国際標準化、知財戦略、将来ビジョンロードマップ、技術文書、人材育成等についても検討を開始する予定です。また、必要に応じて、量子鍵配送及び量子計測・センシング技術推進委員会との合同委員会や合同セミナーを開催し、量子技術間連携の議論を行います。さらに、量子国家プロジェクト(Q-LEAP、ムーンショット、NEDO、SIP等)、量子技術イノベーション拠点(QIH)、量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)との連携も模索していきます。