量子コンピュータ技術推進委員会について
量子フォーラム
量子コンピュータ技術推進委員会委員長田中 宗
量子コンピュータ技術推進委員会は、量子コンピュータ(誤り耐性型汎用量子コンピュータ、Noisy Intermediate-Scale Quantum (NISQ)デバイス)及び、量子アニーリングマシン等のイジングマシンの技術の普及と発展に向けた活動を行っています。
今から振り返ってみれば、量子コンピュータの概念が提唱された数十年前から2000年代頃にかけては、量子コンピュータは知る人ぞ知るものでした。一方、2010年代に入り、量子コンピュータやイジングマシンの技術の発展により、インターネットを介して量子コンピュータ実機やイジングマシン実機にアクセスして、何らかの計算を実行することが可能になりました。また、世界の名だたる企業はもちろんのこと、各国の野心的なスタートアップ企業が量子コンピュータやイジングマシンのハードウェア開発やソフトウェア開発等を進めております。さらに、各国の政府も、量子コンピュータをはじめとした量子技術に対する政策を打ち立て、その上で、重点的な研究開発投資を行っています。日本においても、令和2年に量子技術イノベーション戦略、令和4年に量子未来社会ビジョン、令和5年に量子未来産業創出戦略がそれぞれ策定されており、量子技術が多様な方々に活用される仕組みづくりが急速に進められています。
一方、究極の量子コンピュータである誤り耐性型汎用量子コンピュータが社会実装されるまでには、長い年月を要すると考えられています。そのため、今後、長期的な研究開発投資を実現させることが重要です。また、短中期的に社会実装が期待できるとされているイジングマシンの研究開発も重要となります。これらの研究開発を継続的に進めていくためには、研究開発人材に加え、息の長い社会実装をデザインする視座の高いビジネス人材を巻き込み、また育成をしていく必要があります。量子コンピュータやイジングマシンの研究開発のますますの発展のためには、量子ネイティブはもちろんのこと、他の専門性を有する方が量子技術についても何らかの形で取り組む、いわゆる、量子バイリンガルを含め、多様な背景を有する多くの方々の参入が必要となります。こうした状況を踏まえ、量子コンピュータ技術推進委員会においては、日本における量子コンピュータ技術の普及、エコシステム・サプライチェーン構築、社会実装に向けて、年4回程度の委員会の開催と以下の活動を行います。
① 最新情報共有
年4回程度開催する委員会において、量子コンピュータやイジングマシンにおける最先端の研究開発や社会実装の試行等のトピックスについて委員向けにセミナーを開催します。これまで取り上げた具体的なトピックスとしては、企業における量子コンピュータ・イジングマシンの取り組み事例、量子人材育成、量子産学連携、量子国家プロジェクト、量子拠点等です。セミナーを通して、量子コンピュータ及びイジングマシンの最新研究開発動向や社会実装の試行について情報共有を行い、会員間の連携を促進します。
② 情報発信
量子コンピュータやイジングマシンの各種技術に関し、専門家が科学的エビデンスに基づいた偏りのない情報発信を行うことで、量子コンピュータとイジングマシン技術に対する健全な発展を促進します。また、国内で活躍している若手研究者・技術者に対するインタビュー記事を公開し、当該分野への学生や若手の参入を促します。
③ イベント開催
産業界とアカデミアが集う産学連携イベントを開催し、周辺技術を含めて、今後戦略的に産学連携をすすめるべき技術領域を明確化すると同時に、会員間のマッチングを進めます。また、会員向けに、専門家による基礎技術セミナーやハンズオンを開催し、基礎理論や基盤技術の普及を行います。
上記に加えて、量子コンピュータ技術推進委員会として検討すべきだと委員の皆様から指摘いただいた様々な事柄についても実施して参ります。また、必要に応じて、量子鍵配送及び量子計測・センシング技術推進委員会との合同委員会や合同セミナーを開催し、量子技術間連携の議論を行います。さらに、量子研究開発を実施する国家プロジェクト(Q-LEAP、ムーンショット、NEDO、SIP、CREST等)や、量子技術イノベーション拠点(QIH)、量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)、量子イノベーションイニシアチブ協議会(QII)等の量子研究開発拠点との連携も模索していきます。さらに、量子コンピュータをはじめとする量子技術においては、多様な人材を発掘、育成することが重要であることから、IPA未踏ターゲット事業、Q-LEAP人材育成プログラム、NICT量子人材育成プログラム等の各種量子人材育成事業との連携も模索していきます。川畑史郎前委員長が構築された量子コンピュータ技術推進委員会の取り組みを発展的に継続してまいります。何卒、よろしくお願い申し上げます。