量子計測・センシング技術推進委員会について

量子ICTフォーラム
量子計測・センシング技術推進委員会委員長
荒川 泰彦

量子計測・センシング技術分野は、元に流れているのが量子力学ということで共通していますが、対象や手法が多岐に渡り、実際の展開においては非常に個別性が強い分野です。また、既に社会実装に向けて形が見え始めてきている技術を幾つか擁しているのが当分野の特徴です。今後、量子技術の本格的な社会実装に向けて、量子計測・センシングの分野はさらに重要な役割を果たすことが広く期待されています。

このような状況を踏まえ、量子計測・センシング技術推進委員会は、量子計測・センシング技術分野の現状の把握と将来ビジョンの議論を進め、量子計測・センシング技術の産業利活用等を模索するとともに、量子計測・センシング技術のオープンイノベーション促進のための仕組みの構築を図ることを目的として2019年11月に発足しました。委員会は2021年8月31日現在、委員長、副委員長、幹事2名および委員11名の計15名メンバーで構成されています。メンバーの所属は大学、国立研究開発法人、企業となっており、企業からの参加が増える傾向にあります。

量子計測・センシング分野の対象は多岐に渡るため、他の技術推進委員会とは異なるアプローチを必要とする上、当委員会は発足から間もないことから、以下に示す活動を手始めとして上記の目的を達成するための活動を模索してきました。

(a)委員会の開催

年4回程度の頻度で委員会を開催し、量子計測・センシング技術分野の現状把握や委員会活動企画等についての審議を実施しています。また、他の技術推進委員会と合同でオープン委員会を開催し、分野を超えて量子技術の最新の動向についての講演を聞いていただく機会をフォーラム会員に提供しています。

(b)基礎講座の開催

量子計測・センシング分野は多様・個別的であるため、基礎技術が十分に共有できていないのが現状です。このことに鑑みて、「量子計測・センシング基礎講座」を開催することにより相互の理解を深め、若手研究者の育成と研究者間や産業界との新たな連携の創出を目指しています。これまで「量子固体センシングの基礎」、「光格子時計の基礎」の二回の講座を実施し、それぞれ100名前後の参加で現状と基礎的事項に関する講義を実施しました。講師の先生からフォーラム正会員の方には発表資料を御提供いただいています。

(c)メイルマガジンへの記事掲載

フォーラムが発行するメイルマガジンに当委員会委員から量子計測・センシングに関連する記事を寄稿させていただいています。これまでにイオントラップ光時計、超伝導量子センサー、ダイヤモンドNV中心、ワイドバンドギャップ半導体中のスピン欠陥、時空計測に関する話題を寄稿いたしました。今後は、企業に所属する委員の皆様に所属機関での量子計測・センシングへの取組や委員会活動に期待すること等について記事をお願いする予定となっています。

(d)会員インタビューへの記事掲載

委員会委員への量子計測・センシングに関するインタビューにより作成された記事が、フォーラムwebで公開する会員インタビューに掲載されています。これまでに量子計測・センシング全般、ダイヤモンド固体量子センサー、光格子時計に関する記事が掲載され、webで閲覧可能となっています。

(e)若手研究者のインタビュー記事掲載

他の二つの技術推進委員会と同様に、当委員会でも、若手研究者インタビュー記事の掲載をします。本活動により、多岐に渡る量子計測・センシング分野の魅力を伝えるとともに、同年代もしくは下の年代の研究者/学生が一種のロールモデルとしてとらえて勇気づけられることを期待します。さらに、量子技術分野に未来を担う多くの人材がいることを世の中に示し、また、インタビューを受ける本人には今後の励みとしてもらうことも目的としています。2021年度は6名の若手研究者のインタビュー記事を掲載する予定です。

量子計測・センシング技術推進委員会は先に発足した二つの技術推進委員会から一年から二年遅れて発足したため、委員会活動を軌道に乗せることを当面の目標にして活動してきましたが、ようやく基礎講座の開催などの特色ある活動もフォーラム会員の皆様に提供できる状況になってきました。今後は、多様な技術を擁する量子計測・センシング分野において、この分野全体を包含する産学官連携のコンソーシアムとしての機能を実現し、オープンイノベーションに向けた活動を展開していく所存です。多くの方々が量子計測・センシング技術分野の重要性をご理解いただき、推進委員会の活動に参画されることを期待しております。